●タイにはどのくらいの山地民が住んでいるの?
総人口は86万6749人(2002年のチェンマイ山地民研究所発表)とされています。タイの県76のうち、20県に山地民の村が広がっていますが、そのほとんどは北部タイの山間にあります。
情勢の不安定な国に住んでいる者は安全を求め、経済的な豊かさへの憧れを持つ者はタイ側での生活に夢を見、タイに移住し続けています。
その結果、タイ山地民の人口は年々増加していますが、正確な人口はあまり把握されていません。
●タイにはどんな山地民が住んでいるの?
タイには10部族以上の山地民が住んでいます。そのうち、人口の多い順にカレン族、モン族、ラフ族、アカ族、ミエン族、リス族、ティン族、ルア族となっています。それぞれに、異なる文化・伝統を持っています。
それぞれの人口は、カレン族35万3574人、モン族12万6300人、ラフ族8万5845人、アカ族5万6616人、ミエン族4万8357人、
リス族3万3365人、ティン族3万8823人、ルア族1万637人、カム族1万3674人、ムラブリ族125人となっており、タイ政府はこの10の民族がタイに住む山地民だと承認しています。(2002年のチェンマイ山地民研究所発表)
●どんな山に住んでいるの?
それぞれの民族によって、村を形成するための立地条件が少しずつ異なります。
例えば、アカ族は山の頂上を好み、ラフ族は小川の流れている谷間に形成することを好みます。
~各民族の標高による移住区分~ (2002年のチェンマイ山地民研究所発表)
2200M~1200M ミエン族
1800M~800M ラフ族、アカ族、リス族、カレン族
1200M~500M ルア族、カム族、ティン族
●どんな宗教を信仰しているの?
伝統的な信仰には、‘アニミズム(精霊崇拝)’があります。精霊は、山、家、風、光などあらゆる物事に存在すると信じられ、村内や山の災いは精霊の怒りだとされています。この精霊の怒りを鎮めるために、自然に根ざした様々な儀式を行います。
その他の伝統的な信仰として‘祖先崇拝’や‘神教’がありますが、現在では、キリスト教を信じる者や、タイ国教である仏教を信じる者も多くいます。
●どんな暮らしをしているの?
山の自然に依存した自給自足の生活スタイルで、農耕牧畜文化を持っています。
山の木を切り、斜面を更地にした後で、雨季中に米や野菜を栽培します。一番気温が高くなる乾季中の4月には焼畑をし雑草を燃やして、雨季初頭の種まきに備えます。利用していた土地が痩せると、新しい山の土地を開拓します。
衣:民族の哲学が織り込まれた、独自な民族衣装を持っています。以前は、母から子へと代々その手法が受け継がれていましたが、現在ではケシ栽培ができないため、高価な銀やビーズを現金で購入しなければなりません。昔のような豪華な物を作ることが、とても困難になっています。
今では民族衣装に代わり、もっと快適で安く、低地民とも馴染みやすいT-シャツやジーンズを着る者も多くみられるようになりました。
食:主食は米です。うるち米ともち米の両方を栽培し、各民族たくさんの種類の米を持っています。日本米に近い香りと味の米を栽培する民族もいます。おかずは畑で取れた季節の野菜や豆類が中心です。お餅や納豆を作って食べる民族もいます。
住:中華系の民族を除き、その他の民族は竹で造った高床式の家に住んでいます。基本的に個人の部屋はなく、家族一緒に寝ています。
家のつくりが簡素な理由は、一定の土地に定住するのではなく、何年かするとより住み良い土地へと移動を繰り返すという昔ながらの生活スタイルを持っているからです。
●どんな言葉を使っているの?
民族ごとにそれぞれ異なる言語を使用しています。漢字を用いる民族もありますが、ほとんどの民族は文字を持たず、文書による文化伝承はありません。キリスト教を信仰する村では、アルファベットを使った独自の文字を使っています。また、現在ほとんどの若者はタイ語を話すことができます。
●現在どんな問題を抱えているの?
現在、上記したような山岳での平和な生活は脅かされ、伝統文化が急速に失われつつあります。
地域主導のものではない中央政府による一方的な開発政策と、タイを含む世界の近代化とグローバル化の影響を受け、彼らは変化を強いられているのです。
低地民によって商業的に伐採されてしまった残り少ない山の木々を守るためや、周辺国からの共産主義の影響を避け治安維持を図るため、ケシ栽培を取り締まるために、タイ政府は新たな法律を定め、山地民に低地への定住化を強制しました。低地に移動した村人は、低地の狭い土地での農業方法を知らず、タイの一般教育を受けていない女性たちは、街から来る人身売買業者から身を守る術を知りません。彼女たちの中には言葉巧みにだまされ、売春組織に連れ去られるといったケースが多々あります。
また、低地への移動により、貨幣経済や物質文明への誘惑が村の若者を刺激しています。彼らは現金収入を求めてバンコクやチェンマイといった都市に流れて行きますが、山地民だということで不当に差別されたり、低賃金での苛酷な労働に甘んじねばなりません。
タイ社会からの差別が知らず知らずの内に彼らを傷つけ、低地民とは異なる独自の伝統文化を次世代が受け継ぐことは難しく、急速に村の伝統文化が失われつつあります。
農業や街での仕事に期待が持てなくなった村人は、麻薬や覚せい剤に手を出すようになり、村の中にも薬物中毒者や売買による逮捕者が急増しています。
そして、タイで生まれタイの教育を受けているにもかかわらず、タイ国民として認められない山地民の子どもたちは、進学や就職するのが困難です。また、国内の自由な移動も制限されており、経済的に貧しくとも政府から保護を受ける権利がありません。
このように多くの問題が複雑に絡み合い、共同体意識が弱まっている今、彼ら自身で問題を解決することが困難であるのが現状です。
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